
住宅ローンはいくらまでなら借りても大丈夫かしら…。 いま払ってる家賃と同じくらいの月返済額ならOKよね?



35年返済がポピュラーな住宅ローン。ずっと、ずーっと返済していかなければなりません。「いま払えるから大丈夫」じゃダメです。



でも、銀行は「この年収なら返済できる」って判断したから貸してくれるんじゃない?



その年収はずっと同じでしょうか? 運良く40代までは給与アップするとして、35年間右肩上がりという人は稀です。いっぽう税金や社会保険料は右肩上がりでしょう。物価上昇も含めて実質賃金の減少は深刻です。



もし、住宅ローンが払えなくなったらどうなるの?



一般的に滞納が3か月続くと 債権者から一括返済を求める督促状が届きます。その後、そのままにしておくと抵当権が実行され、家族の想い出が詰まったマイホームは競売を経て他人の手に渡ることになります。
ちょっとコワいことを言いましたが、住宅ローン破綻者は後を絶ちません。人生最大の買い物ともいわれるだけに、多くの人は住宅ローンを利用してマイホームを購入します。よく知らないまま契約するのは とても恐ろしいこと。住宅ローンの仕組みを知り、自分にとってムリのない資金計画を立てましょう。
すでに住宅ローンを返済している相談者の方に「住宅ローンを選択したきっかけは?」とお聞きすると、半数以上の方から「購入先の業者(住宅メーカーや不動産会社など)からすすめられた」と回答されます。
「え!?オススメだけで決めちゃうの?」と最初の頃は本当におどろきました。
よくよくお聞きすると、とにかく時間がないんだそうです。土地や家のことで決めなきゃいけないことが目白押し。売主の都合や 引き渡しのスケジュールに追い立てられ、住宅ローンの話なんて最後のサイゴに出てきてエイヤー! でしたと…。
契約前はなんとなく不安があっても、「買いたい」気持ちが先に立ってしまい、住宅の売り手から「大丈夫ですよ」とか「みなさんも そうですから」なんて言われると、「そうだよね」「なんとかなるよね、みんなも 同じみたいだし」と思いたくなるもの。その気持ち、よくわかります。
あと一歩で欲しいモノが手に入るってときに、悲観的な情報や面倒な話はノーサンキュー。「見ざる聞かざる」作戦で契約まで走り抜けます。でも現実はそんなに甘くない。そのツケは数年後にやってきます。実際に住宅ローンの返済が始まると返済負担は想定より重く、予定外の出費が膨らんできます。それでやっと住宅ローンについて真剣に考えだす、という人がとても多いのです。
つぎに 住宅ローン相談はどのように進むのか、その流れをみてみましょう
これから住宅ローンを組む段階であれば 販売業者さんから提示されている資料などをもとにヒアリング。既に住宅ローン返済中なら償還予定表を確認します。住宅ローンをムリなく完済するためには、ベースになる金融資産の推移をできるだけ正確に予測することが重要。そのためにはライフプランが必要不可欠です。したがって、現在の家計収支から、予測される収入の変化や 今後のライフイベント、子どもにかける教育費の方針や リタイア後に希望する生活レベルに至るまで、さまざまな情報収集をおこないます。
ライフイベント表、キャッシュフロー表をつくり、これから起こるライフイベントに伴ってお金の収支がどのように変化していくのかを把握します。貯蓄額が増えていけば問題ありませんが、途中で貯蓄が底をつき、キャッシュフローがマイナスに転じるケースも珍しくありません。要因になることが多いのはタイミングの悪さ。特に教育資金は子どもの大学進学時から急増するので気をつけましょう。また、60歳定年だと老齢年金が支給されるまで収入がなくなりますし、雇用延長でも直前給与の半分以下になることが多いので、その時期まで住宅ローンの返済が続くなら 事前に対策が必要です。
相談の目的である住宅ローンについて分析をおこないます。変動・期間固定・全期間固定などの金利タイプにはじまり、事務手数料の多寡、保証料の有無、団体信用生命保険や火災保険(住宅ローン債務者に加入義務づけ)の補償内容まで徹底的に比較検討。住宅ローンは金額が大きいだけに、分析の結果 数百万円の節約ができた事例も多く、そのたびに情報収集の大切さを思い知らされます。たとえば共働きなら 夫婦どちらか1人でローンを組むケースと 2つのローンに分けて夫婦で組むケースのどちらがメリットがあるのかを判断するため、住宅ローン控除累計額と融資手数料等諸経費を天秤にかけます。住宅ローン控除の1年当たりの限度額は、年末のローン残高の1%ですので、この限度額と夫婦どちらか1人が負担している税額を比較し、負担する税額のほうが少ない場合は、税額から控除しきれない分を もう1人の負担する税額から控除できるように、夫婦それぞれでローンを組んだほうが有利になるからです。
かつて「サラリーマンは2度破産する」藤川太 著(朝日新書)という本が売れました。Amazonの紹介文には、こんな恐ろしい言葉が並んでます。「人並みの給与所得。子どもがいる。住宅ローンがある。生命保険に入っている。これらにあてはまったら、あなたの家計は危なすぎる。二極化といわれるが、家計のリスクが高いのは実は『中の上』の家庭。十分な貯蓄がなければ、定年後、確実に破産の時がやってくる。(以下、省略)」
いかがでしょう? 概ね著者の主張は賛同できますが、なかでも住宅ローンは危険だと思います。「借りたお金は返さなければいけない」なんて小学生でも知ってることですが、いい歳をした大人が守れないのです。それは「身の丈に合った」買い物ができていないから。衣服を買うときにブカブカのサイズを選ぶ人はいないでしょうが、ブカブカの住宅ローンを選ぶ人はよく見かけます。自分の適性サイズを見極めることが大切です。あとで気がついたらブカブカだった!という人もご安心を。実現可能性の高い改善案をご提供しますので、いますぐ対策をしましょう。
出来上がったライフプランと住宅ローン分析資料を相談者にご説明。スタート地点で収支が合っていないと、未来に向かってどんどん誤差が広がってしまうので、現状をきちんと反映したキャッシュフローになるまで、何度でも修正を繰り返します。そして 改善案をご用意した方には「なぜその方法を選んだのか」をご理解いただくようにしています。どんな手段を講じるにしても、解決の第一歩は 本人が意識して お金の使い方を変えることです。
さぁ、これでようやくPDCAのPのところに立てました。 ずーっと続く住宅ローンと上手に付き合っていくために、明日から→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善) →Plan(更新した計画)というサイクルを元気よく回していきましょう。
ここからは、実際の相談事例をご紹介しましょう。
住宅購入を検討されているBさんご夫妻。将来はお子さま2人の4人家族を想定しています。



賃貸マンションで暮らしてますが、ずっと家賃を払うのがもったいないのでマイホーム購入を考えています。



住宅展示場の素敵な家を見てまわるのって、けっこう楽しいですよね。



はい。でも 話が進むうちに、予算よりだいぶ高くなって…。住宅ローンはOKみたいなんですけど、ムリなく返済していけるでしょうか?



なるほど。住宅ローンのように大きな金額だと不安になるのも当然です。ライフプランをつくってシミュレーションしてみましょう。
ヒアリングのあと、3回ほど修正を繰り返して 出来上がったキャッシュフロー表が下の画像です。
購入予定のマイホームをそのまま取得して何も対策をしないと、65歳になった頃に貯金残高が底をつき破産してしまいます。
問題点として次の2点が浮かびあがりました。
1)60歳以降に収入が減少するのに、住宅ローンの返済がつづく
2)こども2人の大学進学時に教育費が急激に増大する


キャッシュフローのうち、金融資産残高の推移をグラフ化した結果が下の画像です。
お子様の大学進学と同時に貯蓄が急減し 破産へ一直線。まるでジェットコースターのようです。


問題を解決する方法を検討し、キャッシュフローに反映させます。
具体的な対策はつぎの3点です。
1)マイホーム購入金額
現在検討中の住宅メーカーから提示されている総費用は 4,500万円ですが、余計なオプションをやめることから始めて、外注でも取り付けられる エアコンやアンテナは専門業者にも見積を依頼して比較したり、外構は入居後にDIYで楽しみながら 少しずつ作っていくことにしたりと、贅肉を削ぎ落すことで4,000万円まで削減。
ちなみに、注文住宅を値引きする方法はこちらでご紹介しています
≫注文住宅を値引きする5つのコツ


2) 保険料
必要保障額をチェックしたところ、公的保障でほぼ賄えることが判明。加入している生命保険を必要最低限の保障金額に減額したり、リスク細分型やネット専用保険を活用することで 支払保険料を年間30万円から15万円に削減。
3) 住宅ローン
上記2)で捻出したお金を住宅ローン返済に充てることで、返済期間を35年から25年に短縮。期間を短くすることで利息の支払を約100万円ほど節約。
これらの対策を反映させたのが下のキャッシュフロー表です。


収入が減少する60歳頃には住宅ローンを完済。それまでに蓄えたお金で 子どもの教育費増大にも耐えられます。グラフ化した結果(下の画像)も水面下(マイナス)に潜らずに済みました。余裕のある老後とまではいきませんが、100% 預貯金で寝かせているお金の一部をiDeCoのようにお得な制度で長期運用すれば、ある程度ローリスクで リタイア後の資産を殖やすこともできるでしょう。





改善案のグラフを見てホッとしました。子どもは2人ほしいですし、進学で我慢させるのはイヤですから。 住宅ローンを「借りられる」のと「ムリなく返せる」のは、まったく別の話なんですね。



そのとおりです。4,000万円のように大きな金額の話をしていると、だんだん金銭感覚がマヒしてくるので要注意。ライフプランはPDCAの「P」ですから、気を緩めずにPDCAサイクルを回していってくださいね。



はい。 ライフプランをつくったら、モヤモヤしていた将来のことがスッキリしました。節約と資産運用の両輪で 豊かな人生を目指します!